2020年9月1日火曜日

ベンドについて考える①


ギター初心者の前にはFの壁があるように、ブルースハーモニカ初心者の前には「ベンド」が立ちはだかります。

はい、いま立ちはだかれてます

でも不思議じゃないですか、音が下がるの。弦楽器であれば、弦の太さ長さが同じ状態なら、張力を変化させることで音程を変えることができます。

これは弾く前には必ずペグを巻いたり緩めたりしてチューニングするのが当たり前な弦楽器の演奏者にとっては、理屈がどうこうではなく経験的にもわかっていることです。そして弦を押さえる指でそれをやるのがヴィブラートやチョーキングということになります。

※蛇足ではありますが、「チョーキング」というのは和製英語らしく、英語ではギターでも”bending”というそうです。

一方、ハーモニカのように息の吹き込み方で音程が変わるのはやっぱり不思議です。


♪♪♪


「こうすればベンドがかかるよ」みたいな情報は色々あります。


そういうのはちゃんとした人に任せて、ここでは「なぜ音程が変わるのか」について素人なりに考えてみようと思います。



♪♪♪


リード楽器の音程の変化については、「正しい音階-音楽音響学」溝部國光(著)日本楽譜出版社に詳しいです。この本の第17章「風圧とピッチ」で、リードオルガンを例にあげて風圧によるリード(自由弁)の音程変化が説明されています。

一言で説明すると、「風圧でリードの振動部分の長さが変わる」ということです。これをハーモニカに置き換えて図を書いてみると以下のようになります。

普通に吸ったとき。

ドローベンドをかけたとき。


チャネル内の負圧が高くなると、リードが大きく震えて、振動部分が長くなって音程が下がるということですね。

じゃあ強く吸えばいいのかと、力一杯キューっと吸ってもリードがちゃんと振動しなくて音が出ません。無理すれば壊れてしまいます。リードを震わせながらも、圧をかけるというというのがベンドということになります。

リードを震わせている空気の量を増やすと言うよりは、流れる速さを上げるというイメージでしょうか。

知らんけど。

ハーモニカでビブラートをかける方法のひとつに、「ほっほっほっ」といわゆるトレモロをかける方法がありますが、これも吹く(吸う)のを短く区切るときの圧力の変化によるものです。


♪♪♪


クロマチック・ハーモニカを吹いた後にテンホールズを吹くと、ふにゃふにゃです。まるでサスペンションの柔らかい車を運転しているみたいな感じです。おそらくテンホールズはリードが薄いために、わずかな圧力の変化で音程が変わりやすいのだと思います。

テンホールズは半分オモチャみたいな出自ですから、チープな薄いリードだったのでしょう。そのことがベンドを積極的に利用することを可能にして、ブルース音楽にうまくマッチしたという感じですか。

That's 塞翁が馬!

実際の空気の流れもリードの振動ももっと複雑だとは思いますが、なんとなくこんな感じなんだとイメージできれば、ベンドが上手くなれる気がします。

気がするだけですけど。


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ベンドの練習にぴったりですよ。